Dr. 千鳥橋伝法の事件簿

Dr. 千鳥橋伝法(どくたー・ちどりばし・でんぽう)は医師ではない。森羅万象、細かいことがイチイチ気になって仕方がない法律専門職のおっさんである。

抵抗権の高とび その2

 平成31・令和元年は、受刑者が刑務所から脱走したり、刑が確定して保釈中の者が収監のお迎えが来て逃走したりするとかの事件が相次いで、保釈の判断が甘いだの警察何やっとんやだのと批判も多かった。そして、その流れでおじさんが大トリをかざった形になったわけである。

 ところで、おじさんのケースなんやけど、前回に「不法出国」がれっきとした犯罪であってばっちり処罰の対象になることを説明したところであるが、受刑中に脱獄したりするのは格別、保釈中にトンズラするのは犯罪ではない。この話をすると「エエッ〜、そんなんおかしいやん(-_-;」という反応が多いので驚かされる。

 下のとおり、「裁判の執行により拘禁され」てないのでどうみても刑法97条,98条の対象ではない。しかし、トンズラしたら保釈金が没取(ボッシュ、ぼっとり)されるのよね。だから、保釈金の額の勘案が重要で、身分相応の額に比して少な過ぎると「いっちょ逃げてこましたろか」となるわけやね。

刑法 抜粋
(逃走)
第九十七条 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。
(加重逃走)
第九十八条 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。

 東京地検が本件トンズラ劇についてコメントを出しているので引いておこう。 

東京地方検察庁
被告人カルロス・ゴーン・ビシャラの国外逃亡について(コメント)(PDF)
http://www.kensatsu.go.jp/kakuchou/tokyo/page1000001_00013.PDF

被告人カルロス・ゴーン・ビシャラの記者会見について(コメント)(PDF)
http://www.kensatsu.go.jp/kakuchou/tokyo/page1000001_00015.PDF