Dr. 千鳥橋伝法の事件簿

Dr. 千鳥橋伝法(どくたー・ちどりばし・でんぽう)は医師ではない。森羅万象、細かいことがイチイチ気になって仕方がない法律専門職のおっさんである。

外国公務員贈賄罪

 現在のわが国においては、公務員等に対して、手心を加えてもらうために「そでのしたを使う」ようなことをすると、だいたい刑事処分の対象になってしまうだろう的なことは普通程度の教養をもつ人ならたいてい知っている。

 これが、東南アジア諸国においてビジネスをしたりするようなケースだと事情がかなり違っていて、現地の国家公務員のおじさんなんかだとあいさつがわりに「ひとまず50万円くれんか」とか「おカネくれないと仕事せんもんねぇ」とか平気でカマしてくるらしい。で、んなカネ渡せんわと申し伝えるとマジギレして大声で喚いたり脅しをかけてきたり暴れたりするようで。お前、ホンマに国家公務員かよ・・・みたいな話はよくうかがうところである。

時事 (2019年12月02日19時49分)
領事館幹部に現金 贈賄容疑でベトナム人女逮捕―兵庫県
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019120200981&g=soc

神戸 (2019/12/20 21:10)
ベトナム女性に罰金50万円 在留許可巡り領事に現金
https://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/201912/0012976485.shtml

 上の事件ではベトナム人ブローカ女が摘発されたということで、外国人が摘発されるのはめずらしいケースであるようだ。一方で、日本人が外国でビジネスをされるようなケース、現地の習慣に沿ってウカウカと「そでのした」を使っているとわが国の不正競争防止法の外国公務員贈賄罪で摘発されるなどめんどうなことになりかねない。もちろん、現地法で贈賄などが処罰の対象なることもあろう。

経済産業省 外国公務員贈賄罪を知っていますか?(PDF) https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/zouwai/pdf/damezowaipamph.pdf

 なお、上のベトナム人ブローカ女の事件で収賄側の在福岡ベトナム総領事館の領事は捜査に協力するようなこともなくさっさと帰国されたようである。不正競争防止法には外国公務員等への贈賄を処罰する規定はあるが、収賄側を処罰すべき規定はおかれていないのでそもそも当該領事を処罰することはできないようではある。捜査の進展等でいろいろメクれてくると当該領事は「Persona non grata」であるということになってくるのでありましょうな。

不正競争防止法 抜粋
(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)
第十八条 何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。
2 前項において「外国公務員等」とは、次に掲げる者をいう。
一 外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者
二 公共の利益に関する特定の事務を行うために外国の特別の法令により設立されたものの事務に従事する者
三 一又は二以上の外国の政府又は地方公共団体により、発行済株式のうち議決権のある株式の総数若しくは出資の金額の総額の百分の五十を超える当該株式の数若しくは出資の金額を直接に所有され、又は役員(取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で事業の経営に従事しているものをいう。)の過半数を任命され若しくは指名されている事業者であって、その事業の遂行に当たり、外国の政府又は地方公共団体から特に権益を付与されているものの事務に従事する者その他これに準ずる者として政令で定める者
四 国際機関(政府又は政府間の国際機関によって構成される国際機関をいう。次号において同じ。)の公務に従事する者
五 外国の政府若しくは地方公共団体又は国際機関の権限に属する事務であって、これらの機関から委任されたものに従事する者
(罰則)
第二十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(中略)
2 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(中略)
七 第十六条、第十七条又は第十八条第一項の規定に違反した者
(後略)